ショートニングとは?トランス脂肪酸は体に悪いのか?
「使っていますか?」とよく聞かれる原材料の一つ、ショートニング。
ふわふわのパンを作るため、ショートニング、マーガリン、バターなどの固形油脂は必須の原材料です。
当店でもショートニングやマーガリンを使用しています。
ショートニングとは動物油や植物油を原料としたクリーム状の食用油脂のこと。
なぜパンに油脂を入れるかというと、パン生地を捏ねた時にできるタンパク質の膜(グルテン)の間に油脂が入り込むことで、生地の伸びが良くなり水分の蒸発を防いでくれます。
そのため、パンがふっくらと焼きあがり、時間が経っても固くなりにくく、翌日でもおいしく食べられます。
マーガリンやバターとの違いは香りです。
ショートニングは無味無臭なので、素材の香りを活かしたい時に使います。
パン・ケーキ・クッキーのレシピでよくでてきますね。
焼き菓子や揚げ油にもよく使われる油脂で、サクサクとした食感や、カラッとした食感になります。
サクサクとした食感を英語で「ショート」と表現するため、ショートニングと呼ばれるようになりました。
ここは日本だから、「サクサク油」でいいと思うんですけど・・・(^_^;)
ちなみに、ショートケーキの名前の由来もショートニングを使ったケーキという意味だそうです。
マーガリンやショートニングといえば、一時期テレビやネット上で「トランス脂肪酸の危険性」がよく取り上げられていました。
トランス脂肪酸は固形油脂に含まれています。
「狂った油」とか、「食べるプラスチック」なんて言われていますが・・・
トランス脂肪酸って?「脂肪酸」って何?そもそも、「脂肪」とは?
脂肪とは?
脂肪とは、炭水化物、タンパク質と並ぶ食物の三大栄養素の一つです。
脂肪と聞くと、太る!生活習慣病になる!なんて悪いイメージがつきまといますが、極端に不足すると、皮膚や髪の毛に艶やハリがなくなりホルモンバランスが崩れ体調不良になります。
男性に比べて、女性の場合は妊娠という大イベントがあるため、胎児を守るための準備として脂肪を溜め込みやすいことが知られています。
極度のダイエットで脂肪が少なくなりすぎると、脳が妊娠のための準備ができていないと判断し、懐妊しにくくなると言われています。
体脂肪には「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2種類があります。
皮下脂肪は長期的なエネルギーの備蓄、体温の保持、外からの衝撃を和らげるクッションの役割。
内臓脂肪にはエネルギーの一時的な備蓄、内蔵が動き回らないように位置の保持、衝撃から守る役割があります。
内臓脂肪は、皮下脂肪に比べて代謝が早く、食事制限や運動を心がけることで比較的減りやすいことが知られています。
脂肪を食べないと体に脂肪がつかないというわけではなく、炭水化物やタンパク質も取りすぎると脂肪として蓄えられます。
余剰エネルギーがあれば、なるべく体の中にエネルギーを貯蓄しておきたいという体の仕組みがあるからです。
人間を含め、動物は幾度となく飢餓に苦しめられた歴史があります。
食物を食べた時に使いきれなかったエネルギーを脂肪に変換して体の中に蓄えることで、飢餓になった時でも生きていく方法を身につけました。
数日間食べなくても、体に蓄えた脂肪をエネルギーに戻すことで、生き延びる術を持ったのです。
脂肪酸とは?
脂肪には大きく分けて、中性脂肪、脂肪酸、コレステロール、リン脂質の4種類に分けられます。
脂肪酸とは脂肪を構成する要素で、私たちが生きていく上で必要な栄養素です。
燃焼されることでエネルギーを補給してくれることはもちろん、体温を保持してくれたり、細胞膜となって細胞を守ったり、ホルモンのバランスを整えたり、ビタミンの吸収を助ける働きをします。
脂肪酸は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)で構成されていて、その並び方や結合の仕方、構成原子の量によって性質が変わります。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸とは、牛や豚などの肉類やバターなど乳製品、ココナッツオイルやパーム油などの熱帯植物の油脂に多く含まれている脂肪酸です。
安定しているため加熱に強く、酸化しにくい、融点が高い、常温では個体なことが特徴です。
融点が低いほど、脂肪が口の中で溶けることで甘く感じたり、旨味を感じます。
良いお肉やバターほど、融点が低く美味しく感じるのはこのおかげなんですね。
実は、飽和脂肪酸は体の中で脂肪として蓄積されることがあまりありません。
エネルギーとして使い切れなかった飽和脂肪酸は、体外に排出されます。
「バルチミン酸」「ステアリン酸」「ミリスチンン酸」「ラウリン酸」など。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸とは、オリーブ油、サラダ油などの植物性脂肪や、サバ、イワシなどの青身魚に多く含まれています。
不飽和脂肪酸には、コレステロールの胆汁への排出を促進して、血中のコレステロールを下げる働きがあります。
「オレイン酸」「αリノレン酸」「DHA」「EPA」「リノール酸」など。
トランス脂肪酸は体に悪いのか?
通常、不飽和脂肪酸はシス型です。
シス型の不飽和脂肪酸は酸化が早く痛みやすいという欠点があり、さらに常温で液体のため、水素を添加することで原子の並び方を変えて、酸化しにくく常温で固体となる油脂に加工する方法が発見されました。
それがマーガリンやショートニングです。
酸化しづらく常温で固体の扱いやすい、食感を改善する魔法のような油脂は、いろんな加工食品に使われるようになりました。
ところが、トランス脂肪酸は血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やし、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減少させることがわかり、冠動脈疾患のリスクを上げると指摘されました。
2003年、世界保健機関(WHO)と食糧農業機関(FAO)は「心臓血管系の健康増進のため、食事からのトランス脂肪酸の摂取を極めて低く抑えるべきであり、最大でも一日当たりの総エネルギー摂取量の1%未満とすべき」勧告したことで、デンマークやスイスなど各国でトランス脂肪酸の含有量規制が始まりました。
2006年に米国ニューヨーク市がレストランでのトランス脂肪酸禁止を通告して、日本でもトランス脂肪酸を規制するべきという流れになりました。
こうなると、トランス脂肪酸は完全に悪者です。
日本でも一部の市民団体でトランス脂肪酸批判が高まり、マスコミの煽りを受けて、メーカーは一斉にトランス脂肪酸の低減に乗り出しました。
一部の流通大手では「トランス脂肪酸を含む食品は一切店頭に置かない」と発表するなど、トランス脂肪酸離れは止まりません。
各国でトランス脂肪酸の規制をやっているのに、なぜ日本では規制されないのか?
農林水産省が実施した調査研究(2008年)では、日本人が一人一日当たり食べているトランス脂肪酸の平均的な量は0.92~0.96グラム。
これは平均総エネルギー摂取量に換算すると0.44〜0.47%です。
また、農林水産省とは一線を画し、科学的な観点から分析をする期間の食品安全委員会は、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は平均総エネルギー摂取量の0.3〜0.6%と見積もられると報告しました。
共に世界保健機関(WHO)の目標値である1%を大きく下回っています。
なぜ欧米諸国が躍起になってトランス脂肪酸を規制するのかというと、油が大きな原因となる冠動脈疾患が社会問題となっているからです。
日本ではがんや糖尿病、高血圧などのほかの病気に比べて、冠動脈疾患が多いわけではありません。
そもそも、パンやクッキーを驚くほど食べる欧米各国と日本では食文化が違います。
確かに日本の食文化は欧米化しているのは間違いありませんが、油自体の摂取量は欧米人とはかなりの差があるのです。
内閣府に設置されている食品安全委員会では、トランス脂肪酸について食品健康影響評価を国として行っています。
「大多数の日本国民のトランス脂肪酸の摂取量は、WHOの目標を下回っています。脂質に偏った食事をしている人は、留意する必要がありますが、通常の食生活では、健康への影響は小さいと考えられます。」と結論づけています。
食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価の状況について | 食品安全委員会
問題は、トランス脂肪酸にあらず
一部の市民団体や政治家、お決まりのメディアの影響で、トランス脂肪酸批判が鳴り止みませんが、日本のメーカーの技術はスゴイです。
代表的なマーガリンでいえば、
- 雪印「ネオソフト」(0.05%)
- J-オイルミルズ「ラーマ」(0.1%)
- 明治「コーンソフト」(0.1%)
※メーカーや商品によって、未だにトランス脂肪酸含有量が多いものもあります。
ちなみに、バターのトランス脂肪酸含有量は、平均で約2%です。
トランス脂肪酸だけを考えれば、マーガリンよりもむしろ天然のバターのほうが多いという事実。
なんということでしょう。
「マーガリンはトランス脂肪酸でできているから、バターを使っています」とよく聞きますが、トランス脂肪酸だけで考えれば、マーガリンを使ったほうがいいということになってしまうんです。
10年前は15〜20%トランス脂肪酸でできていたマーガリン。
それが、0.1%前後まで低減されました。
批判を受けることを恐れたメーカーは、トランス脂肪酸を使わずにマーガリンを作る方法として、パーム油やヤシ油、牛脂などの飽和脂肪酸を代用することにしたのです。
これにより日本人はトランス脂肪酸の摂取量が劇的に減りました。
しかし、それと引き換えに、飽和脂肪酸の摂取量は年々増加しているとの調査が報告されています。
いくらトランス脂肪酸を食べないように気をつけていたとしても、お菓子を食事の代わりにしたり、間食しすぎたりなど、食生活の乱れから飽和脂肪酸を取りすぎるのも問題です。
日本の伝統的な食事には、大量に油を使うものはありません。
トランス脂肪酸に目くじらを立てる前に、適切な量の食事と栄養バランスに気をつけることのほうが、大切ではないでしょうか?
欧米からやってきた「パン」を作っているパン屋がいうのもなんだか変ですが・・・(^_^;)
ショートニングはパンに必要なのか?
ほとんどのパンには、ショートニング、マーガリン、バターなどの油脂が加えられています。
- パンの膨らみが大きくなる
- 耳が薄くなり、柔らかくなる
- スダチが均一になり、艶が出る
- 水分蒸発を防いで、固くなるのを防ぐ
- 油脂独特の味、香り、風味を加える
- 栄養価を高める
- スライスしやすくなる
油脂を加えることで、多くの利点が生まれます。
油脂を加えなくてもパンが作れます。
フランスパン、ドイツパン、ベーグルは油脂を使っていない配合のものが多いです。
しかし、日本では柔らかいパンが好まれるので、ほとんどのパンには何らかの油脂が使われています。
ペースト状の油脂を使うのがポイント
サラダ油やオリーブオイルを加えるパンもありますが、基本的にはショートニング、マーガリン、バターなどのペースト状の油脂を使うのが一般的です。
小麦粉を練って作られたタンパク質(グルテン)の膜の間にペースト状の油脂が入ることで、パン生地がしなやかになり、水分蒸発を防ぎ柔らかいパンになります。
試しにショートニングの代わりにオリーブオイルを加えてパンを作ってみました。
結果、パンの膨らみは悪く、スダチが丸くなり不均一、オリーブオイルの香りが小麦の香りのジャマをして、美味しいと思えるパンにはなりませんでした。
液状の油脂は、噛みしめる食感を楽しむパンには向いているのかもしれません。
柔らかい食感を目指しているトントンのパンには向いていないと感じました。
トントンで使っているショートニングは?
トランス脂肪酸を使っているよりは、使っていないに越したことはありません。
いろいろなメーカーのショートニングを試して、一番相性のいいショートニングを選びました。
主原料はパーム油、米油、なたね油で、動物由来のものは使用しておりません。
添加物も不使用で安心です。
低トランス脂肪酸のショートニングではありますが、ゼロではありません。(0.5~0.7g/100g)
自然界にも若干あるものなので、ゼロにはできないそうです。
アルコールフリーの飲み物と同じなんですね。