グルテンは体に悪い?その情報は正しくないかもしれませんよ。
健康のためにグルテンフリーのパンを食べたいのですが、トントンさんで作っていただけませんか?
最近よく「グルテンフリーパン」についてのお問い合わせをいただくようになりました。
パン屋からすると、「小麦=グルテン」なので、小麦を使わないパンのご要望かとは思いますが、小麦を使っていないパンは作っていないので…
というか、パンは小麦で作った食べ物という認識なので、「グルテンフリーパン」という名称にとても違和感を感じます。
「健康のために」という言葉も気になります。
欧米でグルテンフリーが流行っていて、日本でもちらほら聞くようになりました。
グルテンって、本当に体に悪いの?
グルテンとは何か?
グルテンは、「グルテニン」と「グリアジン」というたんぱく質が水の中で結びついてできます。
「グルテニン」と「グリアジン」は、小麦、大麦、ライ麦などの穀物に含まれていて、水を加えて捏ねることで、粘り気や弾力性が増します。
パン、お菓子、ピザ、パスタ、かまぼこ、ソーセージ、お好み焼きなどのモチモチ食感を出したり、カレー、そば、ハンバーグなどのつなぎにも活躍します。
特にパンとグルテンは切っても切れない関係。
小麦粉と水を合わせてよく捏ねることで、伸びの良いグルテンが作られます。
グルテンは発酵で発生するガスを塞ぎ、風船のように膨らむことで、ふわふわのパンになるというわけ。
グルテンフリーがもてはやされるわけ
グルテンフリーの流行のきっかけとなったのが、世界No.1テニスプレーヤーのジョコビッチ選手の書籍。
試合を棄権するほど不調だったジョコビッチ選手が、グルテンフリーを実践することにより劇的に体調が改善し、テニスの4大大会「グランドスラム」をすべて制覇したことで、一気にグルテンフリーブームが訪れました。
ジョコビッチ選手は書籍の中で、小麦と乳にアレルギーがあることを書いています。
アレルギーが原因で体調不良になっていたことがわかるのですが、小麦アレルギーの人が増えている背景もあり、いつしか「グルテン=体に悪い」になって、広まっていきました。
グルテンフリーがもてはやされることで、「グルテン=体に悪い」という情報が反乱しています。
- 血糖値が上がる
- 中毒性があり小麦に依存する食生活になる
- 便秘や下痢になる
- 肌荒れやニキビができる
- 倦怠感・疲労感を感じる
それって、本当ですか?
まるでグルテンは悪者のような扱いになっています。
グルテンフリーの本来の意図
確かに小麦を食べることで体調が悪くなる人はいます。
主に小麦のたんぱく質が原因となることが多いようです。
もともとグルテンフリーはアレルギー症状が出る人や病気を患っている人のための食事療法として誕生しました。
しかし、欧州や欧米でセリアック病を患っている人が多いこともあり、いつしか「グルテンフリーは体にいい」に変化して広まっていったのかもしれませんね。
グルテンフリーの食事療法が必要な症状・疾患
小麦アレルギーの方
小麦の中の特定のタンパク質を消化器官で吸収したときに体が異物と認識して、排除しようとアレルギー反応が引き起こされます。
風邪を引いたときに細菌を排除するために、鼻水が出たり咳が出たりするのと同じ、免疫反応です。
詳しくはtontonのコラム-小麦アレルギーとパン屋さんに書いていますので、よかったら読んでみてください。
腸に穴が空く「リーキーガット症候群」は、グルテンの粘り気が原因という情報が飛び交っていますが、まだわからないことも多く、小麦アレルギーによって腸に炎症が生じた結果だと言われている医学博士の方もいます。
セリアック病
セリアック病とはグルテンに対する遺伝性の不耐症で、グルテンを食べると腸の粘膜に炎症が起こります。
うまく栄養を吸収できなくなって、栄養不足になったり、体重減少が起こります。
欧州や欧米では150人に1人発症していると言われていますが、その地域以外で発症することはまれとのことです。(日本人における有病率は0.05%程度と言われています)
グルテン過敏症
小麦アレルギーでもセリアック病でもないのに、グルテンを含む食材を摂取すると腹痛・下痢・耳鳴り・めまいなどが生じる疾患です。
まだ明確な診断基準や診断方法が確立されておらず、解明されていないことが多いと言われています。
その情報は正しいですか?ネットとメディアの根拠なき情報
ネットもメディアも正しい情報とウソの情報が入り混じっているカオス状態になっています。
特にメディアは視聴率や購読率が利益に直結するので、流行りの情報に飛びつきがちです。
また、不安を煽るのも常套手段。
「〇〇は危ない」なんて情報は、とたんに反応が高まります。
都合のいい情報をつなぎ合わせて、科学的根拠の確認をすることなくダイエット情報や健康情報を流していることも。
特に「食」に関する情報は、身近でもあり関心度が高い情報。
ダイエットや健康に結びつく情報が多いので、みんな飛びつきます。
昔と違い、誰でも情報を入手することができる時代なので、SNSでウソの情報が拡散してしまい、収集がつかなくなることも多くあるように感じます。
食品安全委員会の見解
何が正しくて、何が間違った情報なのか、わからない時代になりました。
では、どうすればいいのか?
「食品安全委員会」の情報が、一番信頼できると思います。
食品安全委員会とは、食に関するリスク管理を行う厚生労働省や農林水産省から独立して、内閣府が食の安全について評価を行う機関として平成15年に設置しました。
およそ200人の科学者が所属していて、日本の「食」について、客観的かつ中立公正にリスク評価を行っています。
食品安全委員会では、グルテンのリスク評価について、令和2年に情報を公開しています。
令和2年度食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価の案件候補について(案) | 食品安全委員会
グルテンフリーの食事について、インターネット等に医師の経験的な発信はあるが、公的機関による科学的報告書はない。
食品安全委員会のホームページはデータベース資料が多く、欲しい情報が見つけにくいのですが、Facebookやブログで噛み砕いた情報を公開されています。
【編集後記(睦月)】グルテンについて | 内閣府 食品安全委員会
グルテンによる健康影響について、セリアック病以外に懸念を示唆するに十分な資料がなく、医師の指導による場合などを除き、特定の成分を極端に排除したり、また逆に極端に摂取量を増やしたりするのではなく、規則正しくバランスのとれた食事に努めていただくことが健康のために重要であると考えています。
思い込みにとらわれない生き方
「グルテンフリーは体にいい」という情報が独り歩きしているように感じます。
確かに、小麦で作った食べ物は、小麦だけではなく油脂や糖分が大量に含まれているものが多いので、バランスよく食事するのは難しいのかもしれません。
でも、「グルテンは体に悪い」というのはちょっと違うと思います。
※パン屋だからグルテンを擁護しているわけではありません(笑)
グルテンフリーのブームに乗って、「グルテンは体に悪い」という情報操作で商品を販売するメーカーや販売店も見かけるようになりました。
構造は、無添加食品と同じ。
「健康にいい」というメッセージは、聞こえがよく商品が売れるからです。
何が正しいと思うかは、人それぞれ。
体に合う、合わないは、人それぞれ。
小麦を食べると調子が悪くなる人もいれば、お米を食べると調子が悪くなる人もいます。
いちばん大切なことは、情報に振り回されることなく、食べてみて体調が良くなったり、気分が上がるものをバランス良く適量食べることに尽きると思います。