トントンはなぜネットショップを始めたのか?
本格的のネットショップを初めて、もうすぐ丸8年。
オープン当初は全く売れず、廃業寸前でした。
それでも、ここまでやってこられたのは、「このようなパンを作ってくださって、本当にありがとうございます!」というお客様の声をいただいたから。
苦しくても喜んでくださるお客様のために…
やめる訳にはいかないと、銀行に相談に行ったこともありました。
まだまだ借金は払い終わっていませんが…(^_^;)
最近、トントンを知ってパンを購入された方もたくさんいらっしゃると思います。
ネットショップを始める以前にも、幾度となく危機を迎えてきましたが、なんとか乗り越えられました。
それも全て、お客様の支えがあったから。
お店を始めてからネットショップを始めるまでの経緯を紹介させていただけたらと思います。
念願の実店舗開業
夫婦2人でパン屋を開業したのは13年前のことです。
偶然にもスーパーの中のインストアベーカリーが撤退される噂を耳にして、スーパーと交渉したところ、ほとんどの機材と什器を格安で譲っていただけることとなりました。
通常、パン屋を開業するには1,500万円〜3,000万円必要と言われている中、居抜きでできることとなり、自己資金300万円のみで開業することができたんです。
場所は石川県能美郡寺井町という、人口13,000人の小さな田舎町。
地元のお客様に支持されなければ、到底事業は成立しません。
撤退されたパン屋は、地元でも有名な安売りのパン屋でした。
食パンは一斤100円、あんパンやメロンパンは60円で販売されていました。
新しくオープンした当店は、食パン240円、あんパンやメロンパンは130円。
当時のパン屋の一般的な価格です。
しかしお客様にとっては、価格が倍以上になっているわけです。
しかも地元でもない夫婦がパン屋を開業したので、知り合いも友達も一切いないところからのスタート。
それでも、横浜の有名なパン屋で修行してきたという自信がありました。
田舎にあるお店だからこそ、都会の風を吹かせれば注目されるはずだと信じていたんです。
ところが…
精魂込めて作ったパンは、全く売れませんでした。
スーパーの中のインストアベーカリーなので、目の前にはたくさんのお客様がいらっしゃるのに、みんな素通りされるんです。
挙句の果てには、食パンを手に取ったお客様がレジに来て、「前のパン屋は100円で買えたのに、ここは240円ってどういうこと?高すぎて買えない!」と言われる始末。
「パンが売れないのは、お客様がこのパンの価値をわかってくれないからだ!」
パンが売れない理由をお客様のせいにしたんです。
ネット通販なら良いものは売れるはず!だったのですが…
当時、ネットショップの第一次成長期の時代です。
ネットショップを作れば、モノが売れる!そう言われていました。
楽天やYahoo!ショッピングが認知されてきて、ADSLも普及していて、光回線が出始めたころ。
地元のお客様に理解してもらえなくても、インターネットで多くのお客様に見ていただければ、必ず売れるはず!
楽天は月額費用が高かったので、Yahoo!ショッピングへの出店を決意しました。
ネット通販を始める際、大阪でYahoo!ショッピングの講習会がありました。
画像の貼り方や文章の書き方などを教えてもらいましたが、WEBページを構成する言語のHTMLやデザインを整えるCSSは自分で勉強してくださいとのこと。
日中はパンを作って、夜はYahoo!ショッピングに商品を登録する日々。
とてもWEBページを勉強する暇はありません。
できることは、「おいしいですよ!」「新商品です!!」と訴えることだけ。
たくさんの人に見てもらえれば、パンは売れるはず!と、わからないながらも広告を出したこともありました。
何をどうすればいいのかわからないまま、半年間が過ぎました。
売れたパンの数は、なんと0・・・
一個も売れなかったんです。
あっという間に予算がなくなってしまい、あえなく撤退という決断を下しました。
お客様からのヒント
実店舗でも売れず、ネット販売も断念。
このまま行くと廃業は免れません。
もう、どんなパンを作ればいいのかもわからなくなっていました。
途方にくれていた中、いつもお越しいただくお客様がパンを手に持ちつつ迷われていたので、当時接客をしていた妻のきよみさんがお客様に「どうされました?」と伺いました。
「このパン、おいしいんやけど、子供が食べるにはちょっと大きいなぁ。この半分の大きさにならん?」
じゃあ、明日半分の大きさで作るんで、お昼ごろにお越しいただけますか?
「来る来る!」
妻のきよみさんにコッペパンの半分のパンを作るようにお願いされた僕は戸惑いました。
都会でのパン屋で習得したおしゃれなパンを作れば、必ずお客様が振り向いてくれると思っていたからです。
コッペパンを半分にして、丸めただけのパン。こんなパンで、本当にお客様は喜んでいただけるのか…?翌日、半信半疑で半分の大きさのパンを作りました。
作ったパンをお客様にお渡しすると、とても喜ばれました。
「私のために、パンを作ってくれたっ!」
その時のお客様の笑顔が忘れられない。
そう、きよみさんから聞いて、僕は思ったんです。
お客様に喜んでいただこうと思って作っていたパンは、実はお店側が食べて欲しいパンを作っていたんだということ。
自分が食べて欲しいパンを作のではなく、お客様が食べたいパンを作れば喜んでいただけるということ。
ちょっとした違いですが、何だかガツンと頭を殴られたような気持ちでした。
卵と乳製品不使用のパンを作り始めたわけ
お客様にどんなパンを食べたいか伺って、形にしていこう。
お店に並んでいるほとんどのパンは、お客さまやスタッフが食べたいと思ったパンに変わっていきました。
時には「このパンを同じパン作れる?」と、他のパン屋さんの商品を持って来られることも。
僕が都会で習得したパンはどんどん姿を消していきました。
そんなある日、こんなお客様の声を聞いたのでした。
「卵と乳製品を使っていないパンを作っていただけませんか?」
当時小学校5年生だった、ちなみちゃんのお母さんからのご依頼でした。
ご近所で顔なじみのちなみちゃんは卵・乳アレルギー。
今まで卵と乳製品抜きのパンを作っていただいてたパン屋さんが辞められるということで、やむなくウチに相談に来られたのでした。
その時、このお店で卵・乳製品を使っていないパンはフランスパンだけ。
柔らかくて美味しいパンを作るには、卵や乳製品を入れるのがパン屋の常識です。
実際に卵と乳製品を使わずにパンが作れるのかどうかすらわからない状態でした。
でも、せっかくご要望をいただいたんです。何とかお客様の声にお応えしたい。
ご要望をいただいたのは、卵と乳製品を使わないコッペパン。
業務用ミキサーでパンを捏ねると、最低でも100個は出来てしまいます。
まずは手捏ねで卵と乳製品を使わないコッペパンを作ることにしました。
恐る恐る、ちなみちゃんに食べてもらうと・・・
満面の笑顔!「フワフワで美味しい!!」
あの時のちなみちゃんの笑顔が忘れられません。
ネットショップ、再チャレンジへ
当時、アメブロが流行っていたこともあり、地元のお客様にお店の存在を知っていただきたくてブログを始めました。
すると、しばらくしてお問い合わせをいただけるようになりました。
「うちの子、アレルギーでパンが食べられないんです。そちらで作っているパンを送っていただけませんか?」
お問い合わせをいただいたのは、東京の方でした。
その後も大阪、福岡、名古屋からお問い合わせが…
宅配でお送りすると、どんなに急いでもお届け出来るのは焼けた次の日です。
当店は焼きたてパン屋です。焼きたてではないパンを召し上がっていただいて、代金をいただくわけには…
そう思い、丁重にお断りすると、「美味しくなくてもいいです!とにかく送ってください!!」って。
お客様の勢いに押されて、納得の行かないままパンをお送りしました。
翌日。
「こんなに美味しいパンを作ってくださって、ありがとうございます!とても喜んで食べています。また注文しますので、よろしくお願いします!!」
お礼のお電話をいただきました。
地元の方に知っていただきたくって書き始めたブログ。
でも、その当時は、まだ石川県でブログを書いたり読んだりしている方はほとんどいなかったんだと思います。
お問い合せはもっぱら都会の方から。
日に日にお問い合わせが増えていきました。
電話でご注文をいただくのは、想像以上に大変でした。
お客様のご住所を伺って、伝票を書いて、ご注文通りパンを作って・・・もちろんお店のパンも作らなくてはいけません。
しかも、作った当日に発送しなければいけない。
もう、お店はてんやわんやです。
お電話で大量のメロンパンのご注文をいただいて、お店にメロンパンを買いに来られたお客様にお渡しできないことも。
「その目の前にあるメロンパン、何で買えないの!わざわざ遠くから来たのに!!」
よくお叱りをいただきました。
このままではパンクする、どうにかしなければ…
お客様に背中を押されて、ネットショップに再チャレンジすることになりました。
そして8年。
今まで続けて来られたのも、お客様の応援があったから。
最初からパンが売れていたら、きっと天狗になっていたでしょうし、お客様のご要望を聞くことはなかったと思います。
そして、アレルギー対応パンを作ることも。
パンが売れなくてよかったぁ〜(笑)
お店をオープンしてからネットショップを始めるまでを振り返ってみました。
これからも良い時や悪い時、いろんな波はあるとは思いますが、応援をよろしくお願いします\(^o^)/