米粉パン(小麦不使用パン)を作らない理由
トントンのネットショップで一番多いお問い合わせ。
それは、「米粉パンを作ってほしい」というご要望です。
せっかくご要望をいただいたのに大変恐縮ですが、丁重にお断りさせていただいてます。
米粉パンを作らない理由。
それは…
小麦パン工場と同じラインで製造できないから。
いや、作ることはできるのですが、小麦の混入を防ぐことが出来ません。
厨房内に小麦が舞っているので、どんなに気をつけていても小麦が混入してしまうのは明らかです。
小麦アレルギー対応の米粉パンを作るためには、小麦を持ち込まない専用の米粉パン工場が必要。
現状では、対応するだけの力がなく、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
米粉パン、今なぜ注目されているのか?
近年、健康志向の高まりや、小麦アレルギーを持つ人々の増加を背景に、米粉パンへの注目が集まっています。
- 米粉パンのほうが料理に合う
- 小麦パンより消化が良い
- 日本の風土に合う
- 国産米粉を利用できる
米粉パンには米粉パンの魅力があると想います。
でも…パン屋としては…複雑な気持ちです。
「米粉パンが生まれた歴史」や、「そもそも、米粉パンとは何なのか」ということを紐解くと、複雑な気持ちになってしまうんです。
米粉パンの歴史
昭和40年頃まで、一人あたりのお米の年間消費量が120kgあったのに、現在では約半分の60kg程度。
戦後、アメリカで小麦が大量に余っていたことや、日本政府が欧米文化を勧めていたこともあり、日本人はお米の代わりにパンを食べるようになりました。
その結果、日本で作られるお米が余るようになりました。
危機感を感じた日本政府は、お米の消費を促すため、「米穀の新用途への利用の促進に関する法律(平成21年4月24日)」を施行しました。
「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」とは、お米の加工品を使って新用途への利用を促進し、余っているお米を消費することを目的とした法律です。
当時、パン屋にも米粉を使ったパンが作れないかという相談がよくありました。
そこで登場したのが、パンの中に米粉を配合する米粉パンです。
米粉パンブームの裏側と、100%米粉パン開発の経緯
当時、小麦の代わりに米粉を20〜30%置き換えて、「米粉パン」という名前で販売されていたかと思います。
米粉の特徴を生かした「もちもち食感」が売りのパン。
法律が制定されたこともあり、パン業界では米粉パンを作るのがブームになったほどです。
その頃、小麦の消費が急増していたため、これまであまり見かけなかった「小麦アレルギー」を発症する人が増えていました。
これまで食べられなかった小麦を使っていない「米粉で作ったパン」が販売されている!
当時は注意喚起もされていなかったため、小麦粉が使われていないと勘違いして食べてしまい、アレルギーを発症してしまう事故が多発。
なんとか小麦を使わず、米粉だけでパンを作ることが出来ないか?
一部のパンメーカー、大学の研究所、製粉メーカーなどが米粉100%のパンの研究を始めました。
そもそも、米粉パンとは何なのか?
パンとは、小麦に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」というタンパク質が結びついてできた「グルテン」が風船ガムのように膨らんでできる食べ物です。
なので、グルテンがないと、フワフワのパンにはなりません。
お米にはグルテンを作るタンパク質が含まれていないのです。
グルテンを使わずに膨らむようにするための方法として
- キサンタンガム、グァーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの増粘剤を添加
- 山形大学工学部西岡研究室の発泡スチロールの成形を応用した「結晶性米粉」「非晶性米粉」の組み合わせ
- 食品総合研究所が開発したグルタチオン(アミノ酸複合物)を添加
などの研究が進んでいて、一部市販されています。
元々、小麦パンに米粉を配合するパンのことを「米粉パン」と言っていましたが、小麦アレルギーの方の事故を防ぐために、そのようなパンは姿を消しました。
現在では、小麦成分を含まない「米粉100%」で出来たパンのことを米粉パンと言われるようになりました。
米粉パンは「パン」なのか?
パン屋としては…
この「米粉パン」という名称には違和感を感じます。
なぜなら、パンは本来「小麦で作ったふわふわの食べ物」を指すからです。
小麦パンに比べて米粉パンのほうがヘルシーなイメージですが、実は米粉パンのほうが糖質が高く、血糖値が高い方に積極的にお勧めできるものではありません。
カロリーが低いわけではなく栄養価が高いわけでもない、レシピにもよりますが吸収を抑えられるわけでもないので、ダイエットにも適していると言えないのではないでしょうか。
メリットがあるといえば、グルテンが含まれていないので小麦が食べられない人にとっては素晴らしい食べ物だと思います。
しかしながら、デメリットとして、小麦パンのようなフワフワ感や口溶けの良さを再現することはできません。
米粉パンが生まれた経緯を考えると、「米粉パン」という名称は、なるべくしてなったとも言えますが、この名称のためにパン屋が作る食品と考えられがちです。
しかし、お米にはグルテンを作り出すタンパク質が含まれていないため、作り方も全く違います。
小麦を扱うパン屋にとって、米粉100%のパンを作るのは逆に難しいかもしれません。
「米粉パン」という名称を変えて欲しい
ところで…
小麦粉を捏ねてお米のようなものを作って炊き上げ、お茶碗に盛ったものを「小麦粉ごはん」というのでしょうか?
ちょっと面白いですが…(笑)
米粉100%ということは、「パン」ではなく「おもち」と呼ぶべきでは?
または、「米粉で作ったパンモドキ」がいいでしょうか?
もう「米粉パン」は一般名称として認知されていますので、今更名称を変えることは出来ませんが…
求められているものは、小麦と同じようなふわふわの米粉パンだと思います。
しかし、現状では全く違う食材で同じ味や食感を表現することは難しいでしょう。
トントンで米粉パンは作れないのか?
米粉パンの作り方はわかりませんが、研究すれば作ることは可能だと思います。
しかし、小麦アレルギーに対応するためには、小麦の混入を防ぐために、米粉パン専用工場を建設する必要があります。
小麦アレルギーの元となるグルテンを添加することも出来ませんので、ふわふわのパンを作ることも難しいでしょう。
小麦アレルギーだけではなく、酵母アレルギーの方や腎臓病で食塩を摂取できない方もいらっしゃいます。
油や糖分を摂取したくない方もいらっしゃるでしょう。
どこかでラインを引かなければ、商品を作ることは出来ません。
「現状では、卵、乳、ナッツ類を使わないパン」というラインでアレルギー対応パンを製造しています。
おすすめの米粉パンはこちら
とはいえ、日に日に小麦アレルギーの方は増えているように感じます。
トントンで小麦アレルギーに対応できず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
手に入る米粉パンの中でも、評判のいい商品を紹介させてください。
コンタミネーションの有無までは確認しておりませんので、ご購入の際は確認をお願いします。
第一屋製パンFAHAN
おいしさにこだわった米パンです。
特定原材料7品目を使っていません。
自然解凍するだけでおいしく食べられます。
特定原材料7品目を一切持ち込まない工場で製造、食物アレルギーがある方はもちろん、食物アレルギーがない方も、グルテンフリーの食生活を送りたい方も、安心しておいしく食べていただける商品を目指しているそうです。
大手でここまでこだわった商品を発売されるとは、かなりの力の入れようです。
国産米100%、特定原材料7品目を一切持ち込まない工場で製造とのことなので、安心して食べられますね。
トントンでは対応できない小麦アレルギーの方もパンが食べられる!
2021年3月 生産終了しました
日本ハム「みんなの食卓」米粉パン
おそらく、いちばん有名な米粉パン。
生協さんでも購入できることが多い商品です。
大手スーパーでも見かけます。
通販もされていて、一番手に取りやすい米粉パンです。
Bakeshop SolSol
こちらも有名な米粉パンです。
SolSolの米粉パンは、小麦粉アレルギーがある方でも安心して召し上がっていただけます。
米粉以外の砂糖や塩などの材料にもこだわって、「ココロとカラダにやさしい米粉パン」がモットー。
マイセン
こめひろ
小麦アレルギーの方で食べられそうな米粉パンを調べていたので、どのお店も知っていました。
米粉パンではないけれど、米粉クッキーやスコーンがおいしい「佐賀県神崎のがりさん」ヴィーガン焼き菓子の専門店の「MOR Happinessさん」米粉クレープが絶品の「マゼンタースさん」、他にも、米粉パンに最適な米粉を販売されているお店もお客様より紹介いただきました。
トントンのパンは米粉のパンに変わるの?
米粉パンの研究をされているようですが、現在販売されているパンが無くなって米粉パンになるのでしょうか?我が家の子供達の食生活になくてはならないものなので、現在販売されているパンもぜひこのまま販売をお願いします。
お客様よりメールをいただきました。
現在のところは米粉パンを作る予定はありませんので、ご安心ください。
もし、会社の規模が大きくなって、卵・乳・ナッツアレルギー対応パンをやりつくしたら、小麦アレルギー対応パンに挑戦してみたいと思います。
小麦の減感作療法でトントンのパンをご利用のお客様へ
石川県のアレルギー科の病院では、小麦アレルギーの減感作療法にトントンの食パンをご利用いただいています。
すべての商品において、商品ページの商品仕様欄に商品1個あたりのたんぱく質量を記載しています。
また、食パンについてはスライス1枚あたりの小麦使用量も記載しております。
参考になれば幸いです。
病院の先生の指導に従ってご利用ください。
グルテンフリーパンについての見解は?
ここ最近はやっていて、テレビでも紹介されることが多くなった「グルテンフリーパン」
米粉パン販売のご要望は、小麦アレルギーの方だけではなく、健康のためにグルテンフリーパンを探されている方からのお問い合わせも多くいただくようになりました。
パンは小麦で作った食べ物という認識なので、米粉パン同様、「グルテンフリーパン」にも、とても違和感を感じます。
グルテンフリーパンについては、こちらのコラムに書いていますので、よかったらご覧ください。