イーストって体に悪いの?酵母との違いは?イーストの風評被害について
「イースト」という響きを聞いて、どう感じられますか?
人工的な科学物質?体に悪い?食べてはいけないもの?
実は、イーストとは酵母の英訳です。
ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母なども、いわば「イースト」です。
イースト=酵母とは、自然界の植物、土壌など色々な所に生息する微生物で、糖分をアルコールにかえる代表的な菌類の総称です。
自然界に生息する酵母種のうち、認識されているのは全体の5%程度といわれていて、環境中での酵母の役割の研究などもまだ始まったばかりです。
パン酵母はビール酵母、ワイン酵母の親戚なんですね。
なぜかパン酵母だけが「イースト」と一般的に呼ばれるようになって、風評被害を受けているんです。
そもそも人工的な酵母はない
生き物である酵母に「天然」や「人工」という区別は付けられません。
パンの発酵に適した酵母(サッカロミセス・セレビシエ)に糖蜜を加えて株を増やしたものが、一般的に「イースト」と呼ばれているもので、天然酵母として認知されている「ホシノ天然酵母」や「白神こだま酵母」もイーストとは株が違うだけで、培養して増やしたものが市販されています。
乳酸菌の違いでヨーグルトの味が違うように、パンの味もパン酵母の種類で味が変わります。
人の手が加えられていることが「人工」だとすれば、野菜や肉、養殖の魚なども含めて、ほとんどの食物は人工食物です。
「天然の食物」の定義とは何でしょう?
山や海に行って、自然に生えている野草や野生のイノシシ、養殖ではない天然のマグロのことしょうか?
自然界に存在する野生の酵母が天然酵母だとすれば、一般的に呼ばれているイーストも、立派な天然酵母です。
パンに適した酵母を培養して増やし、人が使いやすくしたものを「イースト」として販売しているだけなのです。
「天然酵母」の表示は販売促進のため
「天然酵母」という言葉を誰が使いだしたのかは知りませんが、「自然食品ブーム」が生み出した幻想にほかありません。
「天然」という言葉の響きが、『自然』『安全』『ヘルシー』というイメージを連想します。
この「天然」という言葉をパン屋を含め食品企業が使う場合には、その製品を天然という言葉で強調し他の製品と差別化する科学的な根拠があるのか?消費者の利益に繋がるのか?を真剣に考える必要があると思います。
イメージ先行で販売促進のために「天然酵母」という差別化を図るのは、いずれその業界の信頼を失うことに繋がりかねません。
イーストにもアレルギーがある
そう多くはありませんが、イーストでアレルギー症状を起こす方がいらっしゃいます。
イーストアレルギーとは、一般的にはカンジダ症、イーストコネクションと呼ばれているもので、イースト=酵母の仲間の「カンジダ菌」が引き起こす症状です。
詳しくは、tontonのコラム−イーストアレルギーとパン屋さんにまとめていますので、よかったら見てみてください。
悪い風評に惑わされないために
人は見慣れないものを排除しようとします。
野生で生きていた時代より、見慣れないものは死の危険が伴う「恐怖」なのです。
特に島国の日本はその傾向が強いと思います。
カタカナ英語を見ただけでアレルギーを起こす人も。
パンという食品は、イーストフード・乳化剤などの食品添加物、イースト、小麦のポストハーベストなど、科学的根拠のない悪い風評をよく耳にします。
でも、一歩踏み込んで正しい知識を身に付ければ、悪い風評に惑わされることはありません。
モノがあふれている今、風評に惑わされない正しい知識が必要だと思います。